障がい者雇用事例/おおつかがゆく!

店長のマネジメントスキルの高い店は障害者雇用もうまく行くと実感しています

株式会社はなまる
管理本部 総務部 CSR・管財担当 マネージャー 木下 卓史 さん

セルフ式讃岐うどん店「はなまるうどん」を全国に展開する株式会社はなまる。
今回は都心のど真ん中。新橋日比谷通り店での障害者雇用をご紹介します。

店内の様子。

オープンキッチンなので、スタッフの動きはすべてお客様から見えます。


(うどんの釜)

(天ぷら)等々

新橋日比谷通り店で働く相川拓弥さん。30歳。
2011年4月入社です。
入社前は都内の障害者就労支援施設に通所。
友人が就職し、自分も就職したくなったということで、はなまるに応募したのだそうです。


洗い場の仕事の様子です。

お箸やナプキンの補充の仕事

レジの仕事も慣れた手つきでこなします。

「 ありがとうございます」と笑顔でおつりをお渡しする相川さん

キッチンには相川さんの業務手順がこんな形で掲示されていました。


一緒に働く副店長さんが作ったそうです。

相川さんを指導した、当時の店長杉山愛さんです。
現在はスーパーバイザーとして複数の店舗の運営管理に当たっています。


本部の採用担当の木下卓史さんです。


おおつか:杉山さんが店長として着任した時、相川さんの担当していた仕事は?

杉山さん:洗い場と仕込みの仕事です。

おおつか:それが今では?

木下さん:うどんをつくったり、天ぷらを揚げたり、レジの仕事もやります。ほかのスタッフと同じように仕事をしています。杉山が教えたんです。

おおつか:どうして相川さんに仕事を教えようと思ったのですか?木下さんの指示ですか?

木下さん:杉山が勝手にやったんです(笑)。

杉山さん:店長の仕事は人を育てることですから。誰でも最初はできないですよね。そして教えればできるようになると思って。強いて言えば、家族に知的障害者がいたことが幸いしてるかな。特別扱いするような感覚がなかったことは事実です。

おおつか:障害がないスタッフより時間がかかったり、手間がかかりますよね。

杉山さん:確かに時間はかかります。

おおつか:でも教えたのですね。

杉山さん:誰でも最初はできないですし、教えればできるようになります。スタッフは高校生からシニアまでいろんな人がいます。障害者とか健常者とかでなく、人それぞれ個性や特性に合わせて教えていくということには例外はないですね。

木下さん:杉山が相川さんへ指導をしていくと、相川さんはどんどん育っていきました。それを見て、「障害があるからできない」というのは勝手な思い込みだなあと思いました。

おおつか:どのような採用活動をなさっていますか?

木下さん:必ず実習します。しかも3回。

おおつか:3回もですか?

木下さん:それぞれ2週間ずつ実施します。計6週間。1回目の実習はお互い緊張の連続です。成功体験もあれば失敗体験もある。1回だけで終わってしまう実習もあります。でも「もう2度と実習はしたくない」「もう就職はこりごりだ」という終わり方はしないようにしています。

おおつか:2回目の実習は?

木下さん:1ヶ月空けて2回目です。その間に、障害者の方も「ここをこう工夫しよう」「ここをこう練習しよう」と思って2回目の実習に臨んでくれる。店舗のスタッフたちも「次に実習に来たときには、この部分を配慮しよう」と準備してくれる」

おおつか:そうやって3回目に移る?

木下さん:そうです。ですから入社まで半年かかるんです。

おおつか:すごく丁寧に採用活動を進めていらっしゃいますね。

木下さん:障害者の人にも「ここで働きたい」と思って入社してほしいし、我々はなまるも「この人なら」という人を採用したいですからね。

おおつか:採用は狭き門ですね(笑)

木下さん:あはは。そうですかね~(笑)。ご縁がなかった場合にも、実習はもうこりごり、就職はもうこりごりと思われないように努力しています。はなまるで実習したことで、何かを学んだり、得意なことを見つけたり、ほめられた経験が自信になったりする。店長サイドでも「もう障害者は勘弁してほしい」を思われないようにフォローしています。

おおつか:その「フォロー」が本部の採用担当の重要な役割なんですね。

木下さん:おっしゃる通りです。「放り込んで終わり」は絶対やりません。何かあったら絶対に本部が飛んでいく。その安心感が一般スタッフ、障害者双方にとって大事だと思います。

おおつか:障害のある人が実習するときに最低限求めていることはありますか?

木下さん:笑顔と元気かな。これは教えて身に着くものじゃないので。

おおつか:障害者を採用するお店はどのようにして決定するのですか?

木下さん:統括スーパーバイザーと協議しますが、基本的にはQ(クオリティ)、S(サービス)、C(クレンリネス)のレベルが高い店舗に雇用を依頼します。

おおつか:QSCの良好な店舗?

木下さん:QSCのレベルが高いということは、店長のマネジメント力が高いということであり、お店としてきちんと運営ができているということです。

おおつか:ふむふむ

木下さん:そういう店の店長は、忙しくてもスタッフにきちんと関わってくれます。仕事も教えてくれます。5分でも面談してくれます。自然と人が育つ環境ができている店に障害者を雇用してもらうとうまくいくと感じます。

おおつか:障害者スタッフが加わって、店舗の運営レベルが下がるとか、クレームになるとかを心配する声はないのでしょうか?

杉山さん:スタッフの中には障害のある人と働くことを心良く思わない人がいるかもしれません。でも半分くらいがOKなら十分です。常に障害のあるスタッフの味方が近くにいてくれますので。

おおつか:お店にはいろんなお客様がいらっしゃいますが大丈夫ですか?急いでいたり、イライラしていたり。

杉山さん:あきらかにそういう雰囲気を感じるお客様の場合は、即座にフォローにはいりますよ!でも、お叱りどころか、「がんばってるね!」という励ましのお声をいただくことの方が多いですね。

おおつか:クレームは?

杉山さん:そういうクレームは一度もないですね。


おおつか:今後の障害者雇用の目標は?

木下さん:最終的には1店舗に一人の障害者を雇用することです。でも数字がすべてじゃない。単純作業だけやればいいというわけでもない。相川さんのようにしっかり育てていく責任があります。

~おおつかのひとりごと~

知的障害のある人は、一般的には、覚えるのは時間がかかるけれど、いったん覚えたら着実に仕事をやってくれると言われます。特例子会社や工場などは、その能力が開花しやすい環境だといえます。
しかし、「はなまるうどん」はそうではありません。オープンキッチンの店舗。時間帯ごとに指示する人が変わる。お客様ありきで仕事の量や順番が変わる。どちらかというと知的障害の人が働きにくい環境です。
勤続5年の相川さん。レジを使い、うどんをゆで、天ぷらを揚げる。食器洗浄を行い、箸を入れ替え、テーブルを拭く。障害のないスタッフと遜色なく仕事をやっています。
「人を育てるのが上手な人」は障害者の能力を引き出すのも上手。どこに障害者を受け入れてもらえばよいか、誰をキーパーソンにすればよいか、悩む採用担当者のヒントになりそうです。

訪問先データ

会社名:株式会社はなまる
所在地:東京都中央区日本橋箱崎町36-2
リバーゲート18階
障害者雇用人数(23人)
※障害者求人は現在公募いたしておりません。
https://www.hanamaruudon.com/
取材地:はなまるうどん新橋日比谷通り店

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