障がい者雇用事例/おおつかがゆく!

障害者スタッフの頑張りが清掃現場を支えています

三幸株式会社
首都圏クリーン事業部 障害者雇用担当 アシスタントマネージャー
吉田 稚菜 さん

三幸株式会社は、清掃事業、設備管理事業、警備事業などを幅広く展開している企業です。訪ねたのは、東京・神田駿河台の本社と、丸の内にある首都圏クリーン事業部の2か所で、「つばさルーム」と名付けられた同社の障害者雇用の拠点です。障害者雇用の拠点で複数の障害者を雇用していくスタイルは、ビルメン業界では珍しい方法です。

障害者雇用担当の吉田さんにお話を伺います。

おおつか:「つばさルーム」とは素敵な名前ですね。

吉田さん:2009年、東京駅に近い丸の内営業所のオフィスでスタートしたのですが、その窓から山形新幹線「つばさ」がよく見えていたことから、上司が名付けました。障害のあるスタッフたちも、大きく羽を広げて未来に羽ばたいてほしいとの願いを込めたと聞いています。

おおつか:つばさルームでの障害者雇用について教えてください。

吉田さん:本社と東京・丸の内にある首都圏クリーン事業部の2拠点で、知的障害者を3名ずつ雇用しており、弊社の清掃業務を後方支援するかたちで仕事を行っています。

おおつか:清掃業務を後方支援するお仕事ですか?すばらしいですね。具体的にはどんな内容ですか?

吉田さん:本社では、清掃に使う電解水の生成、社員の名刺の作成、クリーンクロスの畳み・梱包など、丸の内では、滑り止めの靴カバーの検品・袋詰め、近隣清掃現場で使うタオルの畳み・配達、現場から回収したエコキャップの選別などを行っています。クロス・靴カバーなどは協力会社からの依頼により、お手伝いさせていただいています。


おおつか:このようなスタイルの障害者雇用を選択された背景は?

吉田さん:2009年当時、法定雇用率を満たすには一度に多数の障害者を採用する必要がありました。清掃現場ごとに採用することも検討しましたが、一緒に働く一般社員の協力や理解も得なければならないばかりか、一定の清掃技術がある障害者を短期間で採用することは、容易なことではありませんでした。
そこで当時の上司はまったく別のかたちで仕事を着想し、間接業務の中で障害者が担える仕事を切り出していったのです。そのおかげで重度の知的障害者を含む4名の方をトライアル雇用で採用することができ、現在に至っています。

おおつか:吉田さんが障害者雇用担当に抜擢されたのには、理由があるのでしょうか?

吉田さん:特にないと思います、たまたまです(笑)。通っていた大学で社会福祉系の授業もありましたが、自閉症もダウン症も教科書の中でしか知りませんでしたから(笑)。

おおつか:不安はありませんでしたか?

吉田さん:上司の指導がよかったのかなと。「まずは接してみて」と言われ、そのとおりにしたので、余計な不安や気負いもありませんでした。知的障害といっても、その人によって得意なことも苦手なことも違う。これならわかるだろうと思って伝えても、わかる人もいればわからない人もいる。一人ひとり全部違うんだなあと実感しています。

神田駿河台・本社でのつばさルームのメンバー

左から吉田さん、川島さん、横須賀さん、中井さん、吉田さんとともに障害者雇用を担当する佐藤さんです。

お仕事の様子をご紹介します。
9時45分からの朝礼です

掃除に使う電解水の生成、充填の仕事です。

クリーンクロスは、ほつれや汚れがないか一つずつ確認し、三つ折りにたたんで、包装します。

丸の内・首都圏クリーン事業部でのつばさルームのメンバー
吉田さん、平井さん、村上さん、小越さん

お仕事の様子をご紹介します。
近隣の清掃現場で使うタオルを乾燥させ、配達する仕事。

靴に装着して使用する、滑り止めカバー検品の仕事。
まず汚れやほつれがないか確認します。
汚れが見つけやすいように、補助具を用いての作業です。

台紙にセットし袋詰めします。
細かくて根気が要る仕事です。

おおつか:ここまでにはたくさんのご苦労があったのではないでしょうか?

吉田さん:社内の理解や協力を得る上ではいろいろと苦心しました。最初はあまり関心も持たれず、歓迎されていなかったかもしれません。

おおつか:どうなさったのですか?

吉田さん:徐々に仕事を通じて理解を広げていきました。シュレッダーにかける書類を社内中から収集したり、社員の名刺を作成したり、清掃業務を請け負っているビルへタオルを配達したりといったかたちで、一般社員が障がい者スタッフと何らかの関わりを持てるように工夫しました。そうこうするうち、メディアで取り上げていただいたり、外部から表彰されたりするようになっていったんです。

吉田さん:障害者本人に対することでは、コミュニケーションと意思疎通でいろいろと悩みました。

おおつか:どんなことがありましたか?

吉田さん:難聴で知的障害のある障害者スタッフに対しては、文字やイラストを使うだけではなかなか伝わりませんでした。わかったか尋ねても、それ自体が伝わっていないように感じられて。身振り手振りで、それはもう必死で伝えました。学生時代にちょっとだけやった手話も引っぱり出してきて(笑)。

おおつか:そうしたらどうでしたか?

吉田さん:必死にコミュニケーションの仕方を工夫するうち、意思疎通ができるようになりました。そうしたら仕事もできるようになってきたんです。そればかりか、仕事以外でもどんどん私にコミュニケーションを取ってくれるようになりました。家でも言葉は少なく、喜怒哀楽を表さないと聞いていましたのでびっくりしましたが、信頼されているのだと感じてとても嬉しかったです。

おおつか:障害者のスタッフを指導するうえで気をつけていることは?

吉田さん:あきらめないで粘り強く指導する、ということです。1週間、1ヶ月といった短いスパンではできなかったりわからなかったりしても、もっと長いスパンで付き合っていきながら、補助具やコミュニケーションなどを工夫するんです。そうやっていくうちに、必ずできるようになる。

おおつか:障害者を雇用したい企業の方へのメッセージをお願いします。

吉田さん:新入社員教育と同じだと思えばいいと思いますよ(笑)。最初は何もできなくても、個人の特性をみて、この人はどんなことが得意で、どんなことが苦手なのかな、仕事を教えるときもこうやったらできるかな、この仕事ならできるかな、といった具合に。あまり構えないことも大事だと思います。

 

~おおつかのひとりごと~

「障害者雇用と新入社員教育と同じ」という吉田さんの言葉がとても印象的でした。一人ひとりの得意不得意を見極め、どうすればできるようになるか考え、粘り強くかかわっていく。障害者雇用の仕事を通じて、そんなスキルを自然と身に着けた吉田さん。「障害者雇用担当者は、部下育成のスキルが向上する!」と思っている、おおつかの持論が立証されたような気分です。

訪問先データ

会社名:三幸株式会社
所在地:東京都千代田区神田駿河台三丁目3番地4
従業員数:1860人(うち障がい者数:29人)
https://www.sanko-inc.co.jp/

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