900坪もの売り場面積を誇るスポーツ用品店の「キレイ」を担っている濱川元臣さん。そこへ訪れたのは、腹話術をエンターテインメントの世界へと高めた、いっこく堂さん。ウチナンチューのふたりが交わす、温かくも芯がある共鳴トークに、同席した師匠や猿の助も感動!?

 
二人のクロストーク

いっこく堂さん(以下、いっこく堂):濱川くんの仕事ぶり、スゴく楽しそうでイキイキしてたね。それって、お客さんにもわかるんですよね。だから、お客さんもいい気分になれる。僕の仕事にも通じる部分があって、参考になるなぁと思いましたね。

濱川元臣さん(以下、濱川):ありがとうございます(照笑)。

いっこく堂:就職する前から清掃のお仕事をしたいと思っていたんですか?

濱川:はい。自分は掃除が好きなので。高校生の時から、学校のトイレ掃除も毎日していました。

いっこく堂:何か、掃除が好きになったきっかけがあったんですか?

濱川:最初は学校の先生がトイレ掃除のことを問題にしているのを聞いて、僕は、自分からトイレ掃除をしたいって、職員室に言いに行ったんです。先生は「汚い仕事でごめんね」って言ってたんですけど、掃除してみたら、楽しくて! それから毎日、学校のトイレを僕が掃除してました。

いっこく堂:なるほどー。やっぱり、好きなことが仕事だから、あんなに楽しそうなんですね。僕も腹話術、スゴく楽しいんですよ(笑)。最初はボランティアで始めたんだけど、もっと皆さんに喜んでもらうにはプロになって有名にならないと!と。そう思ってプロになったんです。こうして好きなことを仕事にできるって、幸せだなぁって思いますよね。仕事がストレス解消になるくらい僕は好き(笑)。濱川くんもそうですか?

濱川:はい! 掃除って場所をキレイにすることだけど、同じように掃除している自分の心もキレイになるんじゃないかって思います。たとえば、自分もそうですが、最初はちょっと機嫌が悪い時でも、掃除してキレイになっていると、心も明るくなるから(笑)。

いっこく堂:うわっ、わかります! 僕もネタをつくりたいって時に、部屋が散らかっていると気分が出ない(笑)。掃除すると心までキレイになるって、ホント、わかるなぁー。それに、人を和ませますよね。仕事でもそういう気持ちを大切にしているんですか?

濱川:とっても重要なことは、自分は清掃員で、その責任がかかっているということです。たとえお客さまが汚しても、それをキレイにする責任が自分にはあると思っています。来店したお客さまに気持ちのいい気分で買い物してほしいですから、そのためにも僕たちはキレイにする。それが責任だし、大切かなと思います。

いっこく堂:素敵な価値観を持っていますね。

濱川:それと、もうひとつ大切にしているのは、コミュニケーションです。いろいろなお客さまにあいさつをすること。この仕事の面白さは、好きな掃除をしながら、いろいろなお客さまに声をかけるんです。最初の頃は緊張して、あいさつできないこともあったんですけど、どんどん慣れてきて。お客さまからも「がんばってね」って声をかけてもらうことも多くなりました。それが嬉しいです。

いっこく堂:うん、僕らが店に入った時も、元気なあいさつで気持ち良かったよー。濱川くんが、お客さんに対して壁をつくらない。逆にウェルカムで「こっちに来てください」っていう雰囲気を持っているんだと思いましたね。僕の仕事と共通しているなぁ。こちら側の雰囲気しだいで、お客さんも同じような雰囲気になれるから。

濱川:うん、うん。

いっこく堂:僕も濱川くんと同じことを大切にしていますよ、舞台でもプライベートでもね。パフォーマンスする時はお客さん全員を意識するんです。大きな舞台でも、僕は客席を50人ぐらいのブロックごとに分けて、視線をまんべんなく配るようにね。それって、まさにコミュニケーションですよね? 濱川くんと同じ意識でやっているなぁって、ホント思いますね。

いっこく堂:僕は腹話術を見に来てくれたお客さんに、そのひと時だけでもいいから何も考えず、無心で楽しんでもらって気持ちがラクになってほしい、イヤなことも全部忘れさせてあげられたらいいなーって思いでやっています。

濱川:僕もほかのお店に行った時に、スタッフの方から「いらっしゃいませ、こんにちわ!」って声をかけてもらうと気持ちいいし、ホッとします。だから自分もそういうあいさつしたいなって。

いっこく堂:そう! そう! 濱川くんはあいさつの良さが評判で、社長賞をもらっているんですよね?

濱川:はい。ちょうどそれがわかった時、僕は掃除をしている途中で、店内放送で事務所に呼び出されたんです。「えええーっ、自分、何か悪いことしたかな?」って(笑)。

いっこく堂:注意されるんで、呼び出されたと思ったわけだ(笑)

濱川:はい(笑)。ドキドキして事務所に行ったら、ほかのスタッフもズラーッと並んでいて、店長さんが「濱川くん、おめでとう。社長賞いただきましたよ!」って。2007年と2008年、連続でいただきました。

いっこく堂:連続で!? すごーーーい!!

濱川:今年(2009年)は、就職して3年目なので、また新しいことに挑戦しようと思っているんです。

いっこく堂:おっ! 気になりますねぇ。教えてください。新しい挑戦って何ですか?

濱川:店内は広いので、お客さまから「シューズコーナーはどこですか?」とか「バスケコーナーは?」と聞かれることもあるんです。その時に、ちゃんとご案内できるようになりたいです。今はまだ戸惑ってしまうことが多いので。

いっこく堂:ほーっ、常に前向きですね!

濱川:自分で、仕事に夢や目標を持つことが大切かなと思います。お掃除してキレイにすること、お客さまに気持ち良くあいさつして認められること。その目標は社長賞をもらって達成したんですけど、今年もその気持ちを忘れずに、次の自分の目標を達成できるよう、やり続けることが大切かと思います。

いっこく堂:うん、仕事も人生もそうだけれど、これでいいって満足せずに、もっとできるんじゃないか、もっと違うカタチのことができるんじゃないかって、僕もいつも思っています。えーっと、これは、うーん、これを見ている人だけに特別にナイショで言いますけど(笑)、実は今、僕は韓国語の勉強をしているんです。今までは外国語で腹話術をする時は、その部分の言葉だけを丸暗記していたんですよ。でもそうじゃなくて、初めて文法からちゃんと読み書きもできるようにしようと思ってます。マスターしたらまた別の言語も覚えたいなって。常に目標を持つことが、次のステップにつながるって思いますね。

濱川:はい。それと、僕が会社に来るのが楽しみな理由があるんです。毎朝出勤すると、石井店長が「濱川くん、今日もがんばろうね」って声をかけてくれることです。元気のない朝もあるけれど、店長さんの言葉で勇気があふれてきます。

いっこく堂:そういうひと言って、大きいんですよねー。でも同じように、濱川くんもお客さんに声かけして、元気を与えているんですよ! あいさつって、互いの支えになっているんだなぁ。ホント、大事なことですね。

濱川:はい!

いっこく堂:障害があることで、仕事がやりにくいとか、イヤだなとか思ったことありますか?

濱川:小さい頃はありました。僕、ダウン症で。でも、スポーツの習いごと、たとえば水泳とか空手とかを習っていたので、体つきも顔つきも良くなって、クロールも背泳ぎも、バタフライも泳げます! 今はもう大丈夫。仕事ではやりにくいことはありません。

いっこく堂:スゴいっ! いろんな体験して、何にでもチャレンジしてきて、まさにチャレンジ精神ですね! 僕も腹話術以外にも何か毎日続けられるものがほしいと思って、今は毎日10kmランニングしています。そういう意味でも通じていますね、僕ら。何かやらなくちゃって気持ちを行動に移すところ。

濱川:学校で生徒会の副会長に立候補した時も、先生が「最近みんなのあいさつが少ない」って言ったのを聞いて、みんなでもっとあいさつをしようってスピーチして、当選したんです。

いっこく堂:やっぱり、その行動力だよね。仕事に一所懸命なのはもちろんだけど、普段の生活から前へ進む、進みたいって気持ち。「ダメなんじゃないか」って最初から思わずに、一歩踏み出すことが大事ですね。スゴく仕事にやりがいを持っていると濱川くんからは感じるけど、逆に、この仕事を辞めたいなぁと思ったことはないですか?

濱川:ないです。

いっこく堂:ない!? うわーっ!

濱川:辞めたいってことは、あきらめたと同じこと。僕は根性持っていますんで!!(キッパリ) 自分がポジティブであれば、人生は変わるんじゃないかって思います。

いっこく堂:あっ、それも僕と同じだ。たとえ落ち込むことはあっても、僕も本当にこの仕事を辞めたいって思ったことはないですから。次はがんばろうって、失敗しても次はもっといいものをつくるぞってね。うーん、似ているなぁ(笑)。じゃ、仕事での将来の目標、かなえたい夢って何ですか?

濱川:お掃除が本当に好きなので、清掃のスペシャリストになるのが目標です。いっこく堂さんの夢は何ですか?

いっこく堂:僕は将来、東南アジアの国々を回ることです、タイとかフォリピンとかね。以前に仕事で行ったことがあって。でも、お金を持っていない人は舞台を見られないでしょ? その時に僕が人形を持って外に出たら、スッゴく目を輝かせて付いてきた人がいっぱいいた。そんな子どもたちやお年寄りにも、僕の舞台を見てもらいたいなって。腹話術はもちろん、その土地の言葉を使ってね。土地の言葉って濱川くんと同じ、大切なコミュニケーションだと思うから。そういえば、英会話を習っているんですってね?

濱川:はい。お店に外国のお客さんもいらっしゃるので。この前、「Welcome to SPORTS DEPO!」ってあいさつしたらスゴい喜ばれて、「Nice Boy!」って言ってもらいました(笑)。最近は中国語も勉強しています。

いっこく堂:スゴいなぁー。常に前へ、前へと積極的だし、本当にポジティブだね。だからこそ、お客さんにも社長さんにも認められているだって、よーーーくわかる。その真っ直ぐな気持ち、僕も忘れちゃいけないな。

濱川:僕、いっこく堂さんの気持ち、いっぱい伝わってきて感動しました。これからも自分で決めたテーマ「Never Give Up!」で精一杯やっていきます。

 
 

■幼い頃の夢は?
 濱川さん アイドル系の歌手。歌が好きだったので
 いっこく堂さん プロ野球選手。中学1年生で挫折しましたけど(笑)

■リスペクトしてる人は?
 濱川さん スポーツデポの店長の石井文生さん。何でも相談しています
 いっこく堂さん 俳優の西田敏行さん。西田さんのように、人をほんわかした気分にさせられるような人になりたいです

■好きな言葉は?
 濱川さん 「笑顔」「努力」「元気」
 いっこく堂さん 「畏敬の心」

■趣味は?
 濱川さん 音楽が好きなのでCDを集めること。たくさん持っています
 いっこく堂さん 映画鑑賞と読書。一番好きな映画は『二十日鼠と人間』

■初めての給料、どう使った?
 濱川さん 自分にCDを2枚買って、残りはお母さんにあげました。とても嬉しかったです
 いっこく堂さん お給料というより、出演料で3000円だったかな? たぶん生活費に消えたんでしょうけど、腹話術では初めての報酬だったので、スゴく嬉しかったことだけは覚えています

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