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障がい者の働く場レポート

能力の引き出し方次第で、障害者はどんな仕事でもできますよ

株式会社エルアイ武田
事業推進室 業務部長 大森 千恵 さん

医薬品業界ではじめての特例子会社である株式会社エルアイ武田(武田薬品工業株式会社100%出資)では、現在87名の知的障害者や聴覚障害者・精神障害者が、武田薬品の大阪本社・吹田研修所・大阪工場・湘南研究所の4拠点で、名刺やパンフレットなどの作成、ダイレクトメールの発送、洗濯業務や清掃業務を担っています。

どのように障害者を指導し、能力を引き出してきたのか。設立当初の1995年から現在まで、障害者の採用・指導の中心的な役割を担っている事業推進室の大森千恵さんにお話を伺いました。

 

おおつか:1995年というと、就労支援の制度など全く整備されていない時代です。大森さんは障害者と働いた経験などがあって、エルアイ武田での障害者の指導担当に抜擢されたのですか?

大森さん:いいえ、全く経験はありませんでした。手話の勉強をしていて、手話サークルでお花見に行ったときの話を社内報に載せたのですが、その記事を見た人事部長から、やってみないかと・・・。

おおつか:そうだったのですね。では、どのように障害者雇用を進めてこられたのでしょう。

大森さん:手探りです。当時は障害者の人のお世話をする仕事だと思われていましたし。

おおつか:それが今では(笑)。

大森さん:はまってしまったというか(笑)。

おおつか:4拠点すべてで清掃業務を請け負っておられますが、もともと清掃会社ではないというのに、どの現場も驚くほどの高いレベルで、しかもものすごく仕事の種類が多いです。

大森さん:清掃業務はわが社のメインの仕事といって過言ではありません。建物の外構・居室・共用部・食堂・グラウンド・テニスコート・体育館・敷地内にある稲荷神社、また、吹田研修所の清掃やベッドメイク、海外のVIPが利用するラウンジに至るまで、実に幅広い仕事です。各種資機材を使う定期清掃ももちろん請け負っています。親会社のオフィスや研修所には世界中からお客様が来社されます。「エルアイ武田は特例子会社なので、この程度で勘弁してください」「ここはできますが、あそこはできません」というわけにはいきません。

おおつか:手探りから始められて、いつごろからそのように?

大森さん:設立10年目がターニングポイントです。この年から、床のワックスがけなど定期清掃を請け負うことになりました。それまでは清掃といっても掃除の延長線上のような日常清掃でした。

 

おおつか:どのようにして定期清掃の技術を習得されたのでしょうか?

大森さん:まず親会社と定期清掃の契約を結び、当社から専門業者さんに業務を委託して、座学から実技のポリッシャーの回し方まで教育をお願いしました。そして、専門業者が4人1組で作業する中に聴覚障害の社員が少しずつ入っていき、半年かかって障害者社員だけで作業を行えるようになりました。当時、定期清掃のメンバーになった障害者社員のほとんどは、いまではビルクリーニング技能士の検定試験にも合格し、後輩を指導する立場になっています。この経験は、工夫をしてきちんと教育すれば、障害があっても不可能な仕事はないという自信に変わりました。

おおつか:障害者社員の指導体制はどのようになっているのですか?

大森さん:6つのグループに分かれて4拠点の業務を行っていて、各グループに、業務遂行に責任を持ち、メンバーの指導をするリーダーが配属されています。リーダーだけが障害者社員を教えるのではなく、先輩の障害者社員も新人を指導します。後輩を指導することで先輩社員もさらに成長しますから。

おおつか:リーダーは健常者が担当するのですか?

大森さん:いいえ、そんなことはありません。障害者社員もいます。

おおつか:では、リーダーはどのようにして障害者社員を指導するのでしょうか。

大森さん:まずは、誰がやっても間違いなくできるような方法や手順を整えてもらいます。それをマニュアルや写真にして、「見える化」してもらうこともやっていきます。何より大事なのは、見本を示すことです。それを見てもらい、少しずつ習得してもらっていきます。

おおつか:リーダーになれる条件は何ですか?

大森さん:まず自分自身で、その清掃技術を習得できていることですね。けれども自分ができるだけではリーダーとしては不十分です。

おおつか:他にも条件があるのですね。

大森さん:障害をもった社員の特徴や能力を正しく見極められること、その社員たちから信頼されていることがとても大切です。リーダーには、その人の特徴や能力に合わせて仕事を提供し、能力を伸ばす工夫していくことが仕事だと伝えています。リーダーの能力次第で、障害者の能力はぐんぐん伸びていきます。逆にリーダーの能力が低いとなかなか成長できません。

おおつか:大森さんは、長年にわたって指導者の方々を指導されてきたんですね。

大森さん:アドバイスはしますが、いまは細かい口出しや手出しはあまりしませんよ(笑)。

おおつか:では、どうやって具体的に指導を?

大森さん:つい口を出したくなりますが、できるだけ相談があるまで我慢して、そばで見ているようにしています。うまくできていれば、そう伝えます。できていなければ失敗します。むしろそのときがチャンスで、自分で対策を考えてもらいます。教えられてわかることばかりじゃありません。失敗して自分の頭で考えないと気づけないことは多いですから。

おおつか:障害者雇用に取り組む企業にアドバイスをお願いします

大森さん:障害者は、能力の引き出し方次第で、どんな仕事もできますよ。「この人はこれが苦手」「あの人はあれが苦手」と苦手なことばかりにとらわれずに、よいところを認めて、苦手なことの対応を考えて、どんどん挑戦してほしいです。リーダーの能力は大事ですが、逆に障害者と働くことでリーダーが育つという一面もあります。

~おおつかのひとりごと~

「20年以上もの長きにわたって障害者雇用に関わってこられた、大ベテランの大森さんだからできるのでは・・?」そう思いたくなる担当者もいるだろう。おおつかの表情を察してか、「障害者雇用の助成金などの支援制度を上手に使ったらいい。助成金がもらえるということは、時間をかけて教育できるということですから」と大森さん。障害があるからといって妥協せず、工夫して指導し、じっくりと育てればよいのです。

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訪問先データ

会社名:株式会社エルアイ武田
所在地:大阪府大阪市中央区道修町2-3-6
従業員数:106人(うち障害者数87人)
取材現場:湘南研究所ほか
http://li-takeda.co.jp/

 
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