行政マンから福祉起業家へ転身!「障がい者の働く場を自分でつくりたかったんです」
おおつか:スワンをはじめられたきっかけは何ですか?
飯塚さん:ヤマト福祉財団の主催する福祉作業所向けの経営セミナー、「小規模作業所パワーアップセミナー」に参加したことがきっかけです。当時、埼玉県の障害福祉課に勤務していた私が、小倉さんのお話を聞いてものすごく感動したのです。そのときは、まさか自分がスワンをやるなんて思っていませんでした。
おおつか:そんな飯塚さんがなぜ福祉起業家に?
飯塚さん:行政マンとしてはいろいろな経験をさせてもらえた。やれることは全部やりつくしたという気持ちがありました。定年まであと数年。先はだいたい見える。いつやめても惜しくないと思っていました。どうせ一度の人生ですから納得のいく人生を送りたかった。スワンを始めるにあたっては、この年になって(笑)パン学校にも1年通いました。もともとサラリーマンをやっていて、その後に公務員になった人間ですので。体のどこかに企業人としてのDNAが残っていたのかもしれません。
おおつか:スワン北浦和店のオープンは2006年11月ですね。オープンして7ヶ月の道のりはどうでしたか?
飯塚さん:はっきりいって試行錯誤の連続でした。無我夢中です。今でもそうです。どうやったら売上が伸びるだろうということばかり考えています(笑)。実のところ、経営するということはこんなに大変なものだと思いませんでした。オープン直後、研修を受けたスタッフ2名が退職するというアクシデントもありました。
おおつか:ここに出店しようと決めた理由は?
飯塚さん:出店にあたっては、埼玉県内のあらゆる場所を探し歩きました。浦和、大宮、上尾、岩槻、三郷、春日部、越谷、戸田、蕨、川口。でも見つかりませんでした。そして最後の最後にこの物件に出会ったのです。あとで分かったことなのですが、このビルのオーナーは、3 年前、亡くなった妻が、生前一緒に仕事をさせていただいた方だったのです。亡き妻が引き合わせてくれた物件のような気がします。
おおつか:お嬢さんが店長さんでいらっしゃいますね。
飯塚さん:普通のOLをしてたんですが、一緒に手伝ってくれています。不眠不休でよくやってくれます。娘と一緒だから頑張れています。
おおつか:お店に入った瞬間、スタッフの皆さんの笑顔に迎えられてうれしくなりました。こういうお店は、かならず繁盛すると感じました。
飯塚さん:ありがとうございます。当店では、5名の障がい者を含む16名のスタッフを雇用しています。しっかり働いてくれてとても感謝しています。経営者としての最大の責任は、彼らの雇用を守ることです。全責任を自分が負うのが経営者ですが変なストレスは逆に少ないかもしれません(笑)。だからそれがスタッフに伝わってるのかな。
―真ん中が飯塚さん、その左がお嬢さんです。―
おおつか:どんなお店にしていきたいですか?
飯塚さん:もっともっと地域に溶け込んでいきたいですね。障がい者が働いているからということでなく、純粋に普通のパン屋としてお客様に愛される店になっていたいと思います。自然に障がい者スタッフも当たり前に働いている。そんなお店を目指しています
おおつか:最後に福祉起業を目指す方へメッセージを。
飯塚さん:まず資金。1年や2年の赤字が続いても大丈夫なぐらいの資金は持っていたほうがいいですね。なけなしのお金で始めてはいけない。資金に余裕がなくなると心のゆとりがなくなってしまいますから。
それと、いろんなことを、「これでいい」と満足してしまってはいけない。常に向上しようと努力を続けていくことが大切です。毎日毎日がお客様との勝負です。つまり、障がい者の働く場を作ろうとするならば、まず経営がきちんと成り立つように努力することが、大切だと思います。
私も始めたばかりですが、コツコツとひとつづつ着実に進んでゆきたいと思っています。
―レジの様子を後ろから見守る飯塚さん。―
今回、秘書として同行したのは・・・
中村 真紀さん です。
こんにちは。一日秘書の中村です♪以前から一度行ってみたかったスワンベーカリー、今回は大変貴重なお話が聞けて、勉強になりました。FVPさん、お時間を割いてくださったスワンの飯塚さん、有難うございました。
代表の飯塚さん、私の勝手なイメージですが、福祉業界の方々とは全く違う印象を受けました。福祉屋ではない、経営者としての厳しさというか強さみたいなものをすごく感じました。NPO法人でもなく、株式会社として一般市場で勝負するという、あえて厳しい道を選ばれたのも、深い思いがあってのこと。「起業するに当たって、福祉色を出したくない。普通の会社で普通に障害を持つ方が働いている、そういう世界が望ましい」とおっしゃっていました。まさにその通りのことを実現されてる。素晴らしいと思います。今回の話の中で、印象に残ったのは、飯塚さん:「福祉なんて誰でもできる。人の心を理解できる人間なら誰だって・・・」私、その通りだと思うんです。福祉って、難しいことじゃない、限られた人のものじゃないって。こうした動きがもっともっと広がっていけばいいですね。