障がい者雇用事例/おおつかがゆく!

一緒に働かないのはもったいない

株式会社ソシオネクスト

半導体製品の設計・開発・販売を行う株式会社ソシオネクスト。2017年12月より精神障害のあるスタッフの雇用に取り組んでいます。初めての精神障害者採用から1年半。人事部長(*取材当時)の我妻さん、人材開発課長の常盤さん、スタッフのマネジメント担当の梅川さんにお話しを伺いました。

我妻さん:現在精神障害のあるスタッフは7人。ソシオネクスト人事部に所属し我々と同じフロアで仕事をしてくれています。梅川がマネジメント担当として業務内容、品質・納期管理、体調管理などを行っています。
常盤さん:面談は私が担当しています。業務に関係のない話題もOKにしているので、ざっくばらんな感じで私も楽しんでいます。

おおつか:どんな仕事を担当されていますか?

常盤さん:勤怠確認、各種社員配布書類の確認、社員から提出された申請書類の確認など人事部の仕事はもちろんですが、他部門からも横断的に業務を請け負っています。IR情報印刷、書類の電子化業務、国内出張旅費精算確認、月末払い伝票仕分け、機密文書回収シュレッダー、会議室備品点検・清掃などです。3種類からのスタートでしたが30種類にまで増えました。

<業務管理用のホワイトボード>

梅川さん:業務は基本的には複数で行い、こちらのボードで日々の業務を見える化しています。決まった人しかこの仕事はできないという状況になってしまうと、体調を崩して休んだ際に業務に支障が出ますし、本人もそれが負担になってしまうとよくないので。

おおつか:チーム制なんですね。

おおつか:以前は社内でこれ以上の障害者雇用は厳しいと思っていらっしゃったと伺いました。
我妻さん:そうなんです。グローバルに事業を展開しているため、海外出張の精算業務といった少し複雑な業務が複数ある。また時間外労働が多くなる時期もある。各部署に配置していこうとなると、一定のスキルを持った人でないと厳しいと思っていました。
常盤さん:けれども、そういった人材はもう障害者の採用市場には存在しないことは周知の事実です。
おおつか:ではどのように?
我妻さん:以前の自分たちは、法定雇用率だけを見ていたような気がします。精神障害のある人と接した経験は皆無だったので、障害者雇用は会社の外で解決するしかないのだろうと思っていました。

我妻さん:そんな折、東急リバブルの障害者雇用の取り組みを見学し、衝撃を受けました。勤怠もしっかり安定しており、付加価値が高く、難しい仕事をされていました。自分たちで工夫し、協力し合いしっかり仕事に取り組んでいる。

我妻さん:精神障害のあるスタッフの皆さんにも話を聞きました。「自分の障害を理解してもらって仕事ができることはありがたい」「苦手なこともあるけれど、その分得意なこともある。会社の役に立つのがうれしい」と異口同音に話してくれたんです。

常盤さん:感動しましたよね。
我妻さん:帰りに二人で緊急ミーティングです。我々人事部門で受け入れよう。すぐに直接会長に提案し、了解をもらいました。
おおつか:180度方向転換となったわけですね。
常盤さん:はいそうです。人事部門全体に呼びかけて精神障害のあるスタッフに担当してもらう仕事を切り出しました。実習、面接を経て29年12月に4人が入社しました。

おおつか:1年半たってどうですか?
我妻さん:まずもって、社員の時間外労働の削減に大きく貢献してくれています!
おおつか:梅川さんはどうですか?
梅川さん:未経験でしたので最初は不安が大きかったです。仕事量が多いと体調を崩すのではないか、すべて手順書を用意しなければならないのではないか、この伝え方で大丈夫なのだろうかといった具合に。今も毎日試行錯誤ですが、楽しんでやっています(笑)。
おおつか:我妻さんと常盤さんは、そんな梅川さんの姿をそばで見守り続けてきたんですよね。
我妻さん:当時の梅川は、優しすぎると感じる部分がありました。優しさが過ぎると頼りすぎてしまうし、頼られすぎて梅川も大変そうでした。でも今は違います。やってあげるのではなく、任せることができています。ぐっとこらえる力ができた感じかな。ビジネスパーソンとしても成長しました。他の仕事でも責任感のようなものが感じられるようになってきたというか。
梅川さん:割と楽に考えるようになりました。手順書は、彼らのためのものであるけれど、マネジメント側も楽になるものなんだ。
あったほうがいいけれど、なくてもできることもあるな。お母さんのようであらねばならないと誤解していましたね(笑)。今は伴走者の感覚です。

チャレンジスタッフAさん

Aさん:入社するまでは就職することが目標でした。入社できたときはその目標がかなったんだという思いでとてもうれしかったです。
おおつか:うんうん。
Aさん:そして気が付いたら1年半経っていました。考えてみるとこれまで3か月以上働けた会社はなかったんです。今はそれがとてもうれしいです。
おおつか:ソシオネクストは働きやすいということですね。
Aさん:はい!働きやすいです。

我妻さん:Aさんに聞きたいのだけれど、どんなときにやりがいを感じますか?
Aさん:業務リストの中で、私たちチャレンジスタッフが担当する業務が増えてきたときですね。ああ、いろいろ任せてもらえているんだなあ。やった仕事が信頼してもらえているんだなあと感じます。

もうひとり。チャレンジスタッフのIさん
Iさん:毎日きちんと会社に来れるように体調管理は今まで以上に気を遣うようになりました。最初のころは少し疲れ気味の時期もあったので、以前からやっていた瞑想をまたやるようにしたりとか。
Aさんをはじめ同期ができたのもうれしいです。仕事は楽しいばかりではないし、大変なこともあるのですが、「大変だね」「今日も一日がんばったね」と言える仲間がいる。それがありがたいなあと思います。

我妻さん:多様な社員の能力を最大限引き出すにはどうすればよいか、働きやすさと働き甲斐をどんな風に高めていけばよいか。そんなことを考えるきっかけや気づきを我々は、たくさんもらえたように思います。
おおつか:なるほど。
常盤さん:私もそう思います。障害のあるスタッフに担ってもらう仕事を切り出すには、まず業務フローを見直すきっかけになりました。もっと効果的に進める方法はないか、もっと効率的な方法はないかと考えることにつながります。さらには、一人ひとりの能力を的確に把握し、持てる力を精一杯引き出すために、こちらの成長も求められます。
おおつか:関わる人達全員が成長する!
我妻さん:そのとおりです!障害者雇用の成果と聞かれると、ついつい障害のあるスタッフたちの成長に関心が行ってしまいますが、関わる我々も多いに成長している。その事実はとても大きいと思います(笑)。

我妻さん:入社に至らなかった応募者の方も、全員が「会社の役に立ちたい」と言ってくれました。私はその言葉が忘れられません。その気持ちに応え、会社は入社したスタッフたちに、「働きやすさとやりがい」を提供していかなければならないと考えています。

新しく導入したチャレンジスタッフ向け人事制度は
評価制度と積立型通院休暇制度からできています。

おおつか:採用から1年半経った今のお気持ちはどうですか?

梅川さん:彼ら(精神障害のあるスタッフ)をもっと売り込みたい心境です。

常盤さん:「彼らにはこれはできないかもということを」楽々超えてくれます。
我妻さん:彼らと働いて、周りで働いている社員の意識も変わってきました。ダイバーシティというのは、そこで働く人の意識とか企業文化が変わっていかなければだめなんだと感じます。障害者雇用は、ダイバーシティ経営を会社に入れていくトリガーになると感じます。
おおつか:うんうん。
我妻さん:彼らは毎日成長していきます。そのがんばりを目の当たりにして、自分たちもがんばろうと思います。彼らが一所懸命に仕事に取り組む姿、役に立ちたいと言ってくれること、自分たちの働く意味まで考えさせてくれる。別々に働いていたらそうはならなかった。障害者雇用って、一緒に働く我々にこんなに大きな喜びを与えてくれるものかと知りました。それを味わわないのはもったいないですね。

~おおつかのひとりごと~

障害者雇用。ギアをどちらに動かしていくことがよいのか。その瞬間瞬間ではなかなかわからないものです。
「以前は、障害者雇用は会社の外で解決するしかないと思っていた。でも違っていた。一緒に働くことで我々も成長できる。そんないいことがある障害者雇用なのだから、彼ら(障害のあるスタッフ)と働かないともったいない。」
「一緒に働かないのはもったいない」の考えに、おおつかも心から共感し、引き続き応援し続けます!

訪問先データ

会社名:株式会社ソシオネクスト
精神障害者雇用開始:平成29年12月
障害者雇用人数:38人(うち精神障害者7人)
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