障がい者雇用事例/おおつかがゆく!

信頼できる、大切に育てていきたい人材です

株式会社アイム環境ビル管理

1957年、三越の装飾営繕と清掃業務を請け負う会社として創業した(株)アイム環境ビル管理。商業施設のイベント企画、空間デザイン、設計・施工などの業務なども幅広く手がける会社です。その本丸といえる日本橋三越本店では、現在入社5年目となる清水香さん(知的障害)が、清掃業務で活躍しています。

人事労務を担当する飯岡淳さん、現場責任者の高田和夫さん、清水さんの指導役である稲葉清美さんにお話を伺いました。

まずはお仕事の様子を拝見します。

日本橋三越本店に勤務する清水香さんです。2013年4月入社です。

8時30分から仕事が始まります。

分担表。午前中は、B1~10Fのお客様用トイレ、B1~13Fの従業員用のトイレやベビー休憩室をスタッフで分担して清掃します。

日本橋三越本店のオープン前に清掃を行います。

お客様用トイレ清掃。鏡・洗面台はもちろん、壁も拭き上げます。
各個室も、備品を移動させて隅まできれいに。忙しいときこそ、手を抜かないことが求められる現場です。

百貨店のバックヤードはとても動線が複雑。商品やら段ボールやらたくさんあって通行も大変です。
販売スタッフさん、納品業者さんなど多種多様な方々が行き交います。

そんな中で、すばやく移動する清水さんです。
次は従業員用トイレ。

おおつか:日本橋三越本店での障害者雇用が始まったのはいつからですか?

飯岡さん:10年前です。

おおつか:初めての障害者雇用に対して不安はなかったのでしょうか。

飯岡さん:特に大きな不安はありませんでした。特別支援学校の先生方より学校単位でのバックアップや、学校での企業就労に向けた就業教育実習カリキュラムがより実践的かつ段階的な職業教育となっていたからです。一方、私どものほうでは、生徒さんに対しての不安解消はもちろん、特に保護者の方、そして先生方とのミーティングによる状況認識を積極的に積み重ねていくことを重要視して取り組んでまいりました。

おおつか:日本橋三越本店のご担当者は?

飯岡さん:クライアント様も大変好意的でした。「障害者雇用については今後も積極的な雇用を展開してほしい」というお話をいただきました。

おおつか:障害者スタッフが加わると清掃品質の低下やクレームを招く、という考え方は昔のことですね。清水さんの仕事ぶりについては、どのようにお感じになられていますか?

高田さん:通常業務に慣れてくると雑になったり、日によってムラが出たりする人もいますが、清水さんはそのようなことが一切ありません。しっかり丁寧に作業をしてくれます。タイプ的には、おとなしい控えめな性格というか、自分からは「あれがやりたい」「これはやりたくない」とは言ってこないのですが、だからと言って意欲がないとは思わず、機会があるごとに他の従業員と同様にコミュニケーションをとって、特別扱いしないように心がけています。

飯岡さん:欠勤や遅刻などもなく、まじめに働いてくれています。

高田さん:ただ、周りは年配者が多いから、ちょっと寂しい思いをさせているかな。そんななかで指導役の稲葉さんは、お姉さん的な役割も担ってくれていると思います。

指導担当の稲葉さんです。

おおつか:稲葉さんは、清水さんと一緒に働いたのはいつからですか?

稲葉さん:5年前からになります。実は私より清水さんのほうがキャリアが長く先輩なんですよ(笑)。

おおつか:稲葉さんの役割は?

稲葉さん:仕事は清水さん一人でできますので、私の主な役割は仕事の段取りや時間の管理です。毎日のシフトは状況に応じて臨機応変に組んでいるので、清水さんには出勤後、私に電話を入れてもらってその日の作業場所を指示しています。「今日はお客様用トイレのB1をお願いします」「はい」。終了したらまた連絡をもらい、「次は……」という具合です。

おおつか:清水さんと仕事をするうえで、意識していることは?

稲葉さん:特に開店前のお客様用トイレの清掃は時間厳守なので、時間内での作業を意識することも伝えています。決められた時間に終わりそうにない場合は、必ず30分前には電話をするようにと。

おおつか:なるほど。

稲葉さん:ちゃんと電話をしてくれます。「やってください」ということは必ずやってくれて、難しいかなぁと思うことも「はい」と聞いて、次にできるようにしてくれたり。できないことはできないと言ってくれることも助かりますね。とても頑張ってくれているし、清水さんは素直で曲がっていないというか、嘘がない。信頼できるスタッフです。

おおつか:今後はどのように?

高田さん:本人の希望を聞きながら、もっとチャレンジしてもらえるようにしたいです。清水さんはいろいろな仕事ができる人材だと思っていますので。

飯岡さん:2015年、新木場に当社グループ専用の研修センターを設立しました。クライアント様の現場での業務環境を再現した床材・器具・機器類を揃えて、より実践に即した対応強化を図っています。清水さんについても一般社員の研修に一緒に参加してもらうことに加えて、障害者スタッフに特化した教育システムやスキルアップの仕組みを整えていきたいと考えています。まずは障害者スタッフ向けの評価シートの策定から取り組むつもりです。

おおつか:それはいいですね。

飯岡さん:障害のあるスタッフの真面目で丁寧な仕事ぶりは、企業にとって組織の活性化を生み出す力となりますので、貴重な人材として大切に育てていきたいです。また、2年後の東京オリンピック・パラリンピックでは、世界中から多くのお客様をお迎えする百貨店の「縁の下の力持ち、裏方で支える黒子」として、さまざまな経験を共有していきたいと思っています。

~おおつかのひとりごと~

「障害者スタッフが加わると清掃品質の低下やクレームを招く、という考え方は昔のこと」とおっしゃる人事・労務担当の飯岡さん。ビルメン業界の障害者雇用の常識が明らかに変わっていることを実感します。そしてこれから。障害のあるスタッフは貴重な人材、との考えのもと、「大切に育てたい」とおっしゃる本社と現場。ビルメン業界の障害者雇用の課題は、「どう採用するか」「どう配置するか」の次の段階の「いかに育てるか」に入ってきているように感じます。

訪問先データ

会社名:株式会社アイム環境ビル管理

所在地:東京都港区赤坂五丁目3番1号

赤坂Bizタワー28階

従業員数:1,213人(うち障害者数15人)

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